ち・か・ら

 

                           安堂俊雄

 

あの悲惨に

何が出来たか 何をすべきだったのか

これから何が出来るのか 何をなすべきなのか

 

大地が崩れ 家が潰れ 

寸断された道路は川に沈み

水が火が 波となって襲いかかる

幾度も幾重にも これでもか、これでもかと

 

ああ、無辜の民

破壊しつくされた生活

長年親しんできた家屋、田畑、道、

山、川、空に涙ぐみ決別を告げねばならなかった人々

先祖からの古里に別れを宣せねばならなかった人々

途方にくれた眼

放心せざるを得ない身体

それでも それだからこそ

あの人々の笑顔、慈しみは何処かへ行ってしまったとでも言うのか

 

惨劇に疲れ切った人々に

生活に疲れた私が

何が出来る

 わずかなわずかな募金 

 

「こんな苦しい事ばかりは続きませぬ

こんな苦しみばかりが続くわけはありませぬ

今に救世主が現れて下さる

もうすぐだ じきに来て下さる

それまでの辛抱です」

そんな言葉にさえ縋りついてしまいそうな

ため息さえも出ない惨たる有り様

 

私達は生きているのだ

涙を垂らし

鼻水をすすり

歯を食いしばって

私達は生きているのだ

潰されてはいない

死んではいない

それは力なのだ

その力を信じて

その力を頼りに

頑張ってください

頑張ってください

頑張ってください

泥水をすすってでも

生きてください

生きてください

生きてください

おにぎり一つでも

こらえてください

紙コップ一杯の水を

有り難く飲んでください

命の糧です

あの数度にわたる衝撃を

生き延びてきた

自分の力を信じてください

己を頼んでください

 

耐えて耐えて耐え抜くのです

生きて生きて生き抜くのです

どうかどうか お願いします

 

伴走者なら

ここにも あそこにも

国中が 共にあります

 

耐えられないことにも

耐えてください

生きてください

歯を食いしばって

頑張ってください

生きてください

    
 
   
   
   
   
    「新潟県中越地震」の遭難者の方々へ  
     
   「頌」22号 (2004-12-20) 所収  
     
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